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死の瞬間

 毛利孝一という町の開業医の方が、ご自身の経験と、臨終に立ち会った数多くの患者さんの状況から書かれた「死の瞬間」という本を読んだ。(菁柿堂刊)

 私は同窓会などで「がん待望論」と称して、同じ死ぬのなら痴呆になって、近隣に迷惑をかけたりするよりは、死期を予告してもらえる「がん」で死にたいという話をすると、友人たちは「がんの末期は苦しいらしいよ」と反論してくる。

 死に直面して、一時的な苦しみは甘んじて受ける積りでいたが、この「死の瞬間」を読むと、必ずしも苦しいとは限らないことが分かってきていると言う。外から見ていると、七転八倒の苦しみのように見えても、本人は案外フワフワの雲の上に乗っているような気分で、苦痛を感じていなようなのである。

 その理由として毛利さんは、元々人間はほんとに痛くなったり、苦しくなったりした時には、ベータ・エンドルフィンというモルヒネ様の物質を作り出し、この痛みを大幅に緩和するのだそうである。やはり生物というのはよくできているものだと感心すると同時に、次の同窓会には「死ぬ時には苦しまないらしいよ」と言ってやる積りである。

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